.
代表理事ごあいさつ

「アジア・アパレルものづくりネットワーク(略称:AAP)」に、ご支援をお願いいたします。

代表理事代表理事サイン


代表写真

1.中国情勢の激変とチャイナプラスワンの必要性
 中国はWTO加盟、北京五輪、上海万博などを経て、GDP世界第2位・外貨準備高世界第1位の大国に躍り出ました。そして「世界の工場」から、「世界の市場」へと大きな変貌を遂げてきました。そのような激変の中で、中国に進出した縫製加工業を始めとする労働集約型企業は、人民元高・人件費高・人手不足・労働争議頻発・電力不足・融資難などの困難に遭遇し、チャイナプラスワンの行動に踏み出さざるを得なくなってきています。すでに欧米企業は一足早く、ベトナムなどにその拠点を移しています。たとえばナイキの生産量はすでに中国よりベトナムの方が多くなりました。これに対して日本企業は、中国の激変への対応が遅く、また移転先国の情報も入手できず、去就の態度を決定しかねているのが現状です。

2.移転先はどこが適地か?
 中国は日本の労働集約型企業にとって、比較的進出しやすい国だったと思います。先行企業が多くなおかつ地理的にも近かったため情報も豊富で、また日本への中国人留学生なども多く、通訳にも不足しなかったので言語の問題も大きな障害とはならなかったからだと考えます。ところが中国以外の東南アジア諸国の情報はタイなどを除き、きわめて少なく、なおかつ現地語を話せる人が限られており、企業が進出する際に必要な生(なま)の情報が入手できない状態であり、公的機関などの現地情報も十分だとは言えない状況です。
 しかし一方で、アジア各国によく目を凝らしてみると、意外にもインドネシア・ミャンマーなどには現地に日系縫製工場がすでに存在しています。それらの国から中国に縫製工場が移転されたのはわずか10年ほど前であり、その当時の縫製工場が現地化したり、華僑の工場になったりして存続してきているのです。またベトナムやラオス、バングラデシュなどには日本の縫製工場が新規に工場進出をし、稼働しています。
 したがってこれらの国に現存している縫製工場を組織化し、日常的に現地情報を収集し、中国からの工場移転先を探している企業に、その情報を提供することができれば、それは大きな力になるのではないかと思います。

3.SSC会に学ぶ
 東海地方の縫製加工業者は、20年ほど前、中国に日本全国の先陣を切って大量に進出し、その多くが成功をしました。それはなによりも、先達者の株式会社サンテイの常川公男社長の絶大なリーダーシップによるところが大きいのです。常川社長は中国進出後、同業他社進出企業を率いてSSC会を設立し、毎月1回会議を開き、その中で中国進出のノウハウを惜しみなく披露されました。この会は現在も引き続いて開催されており、238回を数えるようになっています。
 アジア・アパレルものづくりネットワークは、常川社長のSSC会に学び、アジア各国の縫製加工業者の情報交換の場とすることを最大の目的としたいと考えています。そしてその情報の発信こそが後発の縫製企業に、進出の際の有力な手がかりになるのではないかと考えています。結果として、日本企業がアジア各国での欧米系や中国・韓国系のアパレル生産企業との競合に勝ち残ることができ、日系アパレル生産企業が生産拠点を確立し、経営者や技術者などの日本人幹部人材を養成することができると確信しています。
 このような趣旨のもとに、AAPの設立をアジア各国の日系企業に働きかけたところ、6か国:20社以上の日系企業から賛同の声をいただき、4月には設立総会を行う予定でおりました。

4.「グローバル」な「ものづくり日本」を目指す
 3月11日、東日本大震災が日本を襲いました。東北地方には優秀な縫製工場が存続しており、AAPの趣旨に賛同し、参加を表明してくださっていた企業もありました。しかし震災後、「日本の景気の冷え込みや諸般の事情を考慮して、しばらくAAPの設立を見合わせてはどうか」という声が同業者の間から寄せられました。そのアドバイスに従い、設立を2か月ほど延期し、その後の被災地の状況などを見守ってきました。その間に、テレビなどでは現地の企業の皆様が必死になって地元の復興に努力されている姿などが放映され、被災した縫製工場の経営者や従業員さんからは、海外移転などはまったく望まず、地元での企業の再興を目指して奮闘する旨の意思表示が伝えられてきました。
 しかしながら鎖国時代ならばともかく、現代社会はグローバルに展開しなければ、企業の存続が難しいのも事実です。したがって今こそ、東日本での企業の存続とグローバルな展開を両立させるような発想が必要なのではないでしょうか。AAPはその発想に基づき、東日本の縫製加工企業と手を携えて前進し、共生できるような仕組みを考え出して行きたいと思っています。その一つの試みとして、ものづくりの本拠地を東日本に残すために、東日本の縫製加工企業と協力して、日本人技術者の養成に尽力して行きたいと思っています。

5.中小企業の果たす役割
 縫製企業の工場進出には、投下資本が少なくてすみ、周辺産業の蓄積がなくても可能であり、稼働を開始し利益を計上するまでに長期間を要しないという利点があります。したがって今までも、他産業に先行し、日本企業の先頭バッターとして各国に進出してきた経緯があります。またオーナー経営の中小企業が多く、いわば進出や撤退の決断が早く、大企業にはない神出鬼没の身軽な経営を得意としています。さらに経営者自らが現地に入り込んで陣頭指揮を執っている場合が多く、各国において、それぞれの現地政府などとも個人的な友好関係を築き上げています。このような縫製工場がアジア全域に存在しており、今回、それらがAAPという組織を結成して、お互いの情報交換を密に行おうとしているのです。
 この組織は、日本政府の海外事業の受託や援助を主たる目的とするものではありません。むしろ現地企業からの生の情報を、HPなどを通じ積極的に公開し、現地の工場見学などを通じて、日本の政府関係諸機関や多くの日本企業に寄与協力することを目的とするものです。できうればこのAAPの動きに続いて、他産業の中小企業の業界にも同様の組織が結成されることを、強く望むものです。

6.遠望
 チャイナ・ウォッチャーたちの間には、「中国のバブル経済崩壊が近い」と声高に叫ぶ人もいます。たしかにその可能性も否定できません。もし中国のバブル経済が崩壊したら、中国には失業者が溢れ、再び「世界の工場」に逆戻りするのでしょうか。残念ながら、その後の中国については、誰も明確に予測できていません。したがってAAPでは、中国で経営続行中の縫製工場から不断に情報を収集し、引き続き中国経済や現地事情を詳細に見続け、適切な情報提供を心がけて行くつもりです。
 逆に中国経済が大方の予測通り、順調に肥大化し、中国が覇権国家としての姿を現し、日本を含む周辺国家への強大な圧力を行使し始めようとするとき、AAPを始めとする民間組織は、日本を含む周辺国家と中国の間の緩衝材としての重要な役割を果たすことができると考えています。
 さらにアジア各国は、ユダヤ商人・華僑・印僑が入り交じってビジネスを行っている戦場です。AAPはこれらの現場で英語・中国語・現地語を駆使して、彼らと十分に戦える日本人ビジネスマンを養成する訓練所にすることができると考えています。

以上  

ページトップに戻る